歌舞伎風俗通信

歌舞伎コラムです。
以前某雑誌に連載していたものの書き直し再録です。
その他いろいろうざいウンチクです。楽しんでいただけると嬉しいですー。
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# 名前と官職の関係:01
「名前と官職の関係」

とある人力サイトの質問に答えた内容に補足したものです。

「・・・之助」「・・・之介」というのは長男オンリーの名前だというのは本当か、
次男以降に付けてはいけないのか、何か理由はあるのか」

という質問に対する答えです。

他の回答に「「スケ」は「二等官」を指すので、次男の名前」、という大うそ回答があったのを受けています。
ていうかそのデタラメ回答なかったら回答しなかった。

たしかに、「カミ・スケ・ジョウ・サカン」というのは1等官〜4等官を意味しますが、
次男=2等官って発想、ヘンですよね。
官職名が時代とともに人名に変わってきたのは確かですが、兄弟の序列とは当然無関係です。
まず、同じ官職名でも、「カミ」は名前になりません。長男次男関係なく、人名にならないのです。
時代劇に出る「水野越前之守(みずの えちぜんのかみ)」の「越前守」などは、名前でなくてりっぱな官職名です。
幕府の役人は、朝廷からも官位と官職を(形だけですが)与えられたのです。

で「スケ」以下が人名に使われるようになった経過ですが、
まず平安時代「揚名制度(ようめいせいど)」という制度がありました。
実権のない「官職」を、名前だけ売り買いするシステムです。
財政的に逼迫しつつあった朝廷が、皇族や貴族たちに「換金できる任命権」をばらまいたのです。
源氏物語にも「揚名の介」が出てきます。

とくに地方の新興勢力者(後の大名たち予備軍)は、社会的ステイタスのために金を払って「介」や「サカン」などの朝廷の官職を買いました。
買えるのはこれら2等官以下でした。さすがに「守(長官)」は一人だけだし、売れませんので。
「揚名」=名前を名簿に揚げるだけですので実権はありません。給料ももちろん出ません。


で、これらの官職の任期は1年なのですが、はじめはリチギに毎年官職を買っていた地方有力者たちも、だんだんめんどくさくなったり、ツテのある貴族が没落したりして、正式な「スケ」や「ジョウ」ではなくなります。
でも、当時はえらい人は役職名で呼ぶのが慣例だったため(今もか)、去年まで「○○之介どの」だったヒトを今年から違う名前で呼ぶのも妙なので、
実際の官職はなくても、引き続きその官職名で呼ばれ続けたのです。
そのうちその官職が「名前」として定着し、しかも子供にも伝えられるようになったのです。

で、だんだん命名がイイカゲンになってきて、実際には存在しない「由良之助」なんて官職名(?)を名前にしたりするようになってきたわけです。
他に、今も残る官職由来の名前に「兵衛(ひょうえ)→(べえ)」「右衛門(えもん)」「左衛門(さえもん)→(ざえもん)」等があります。
昔はもっといろいろありました。
「隠密支配、内藤勘解由」。この「勘解由(かげゆ)」も元は役職名です。
他に「弾正(だんじょう)」とか「主税(ちから)」とか「主計(かずえ)」とか。

歴史的にこの変換のはざまにあったのが、鎌倉後期から室町のころだと思います。
歌舞伎(というか文楽)の「鎌倉三代記」三段目の主人公「三浦之助義村」(みうらのすけ よしむら)なんかが典型的です。
正確な名前は「三浦平六義村(みうら へいろく よしむら)」です。 名字が「三浦」で名前「義村」です。おじいさんが「三浦大介義明(みうら おおすけ よしあき」 と名乗りました。介の官位を持っている、りっぱな三浦さん、みたいなかんじです(てきとう)。
この「介」が子、孫に引き継がれ、この時代は名字のあとにくっ付いていたりもしました。当時は「介」と書いていたのですが、時代下って歌舞伎の役名になるころには、名前っぽく「助」になってしまいました。なのでますますどこが名字か名前かわからないフルネームになってしまいました。

この時代もお武家さまの名前は二つあるにはあります。「梶原 源太 景季(かじわら げんた かげすえ)」みたいなかんじです。ただ、この真ん中の「源太」は「長男」であることしか意味しません。
だんだん官職を持つ侍が増えて行って、この「源太」の部分に官職名を入れるようになり、官職名が、さらにまた「ただの名前」に変化していったのだと思います。

とはいえ、てきとうに付けているとはいえ、「介」「助」などはタテマエ上は「その家が」拝領した官職名ですし、長子が家督を相続しますから、長男しか名乗らなかいのが妥当だろうと思います。
一般的な「○○ノスケ」は長男のみに付ける、という意識には理由があるということです。

チナミに、
「官位」も「官職」と同様に売買されました。「官位」由来の名前は「大夫」「太夫」です。
芸事のお師匠さんなどが、よく「○○太夫」を名乗ります。
「大夫」は「五位」を意味します。官位のランクでいうと「六位」から昇殿できます。それ以下は非常に低い官位です。
ただ、六位は昇殿できると言っても雑用係です。その上の「五位」は定員も少なく、なかなかなれなかったのです。
この、あこがれの(笑)「五位」の位を売買したのです。
「山椒太夫」などは、「地方豪族が金で官位を買った」典型的な例だろうと思います。

ただ、伝統芸能などの「○○太夫」の名前は、金で買ったのではなく、芸が認められた人が、朝廷に官位を「拝領」した名残です。
同じ方向性で、老舗の和菓子屋さんなどが「○○之丞」を名乗ります。これも朝廷から三等官の地位にあたる名前を拝領したのです。

位の高い遊女にもにも「大夫」の名が付きます。また最高位の位そのものを「大夫」とも呼びます。
これは、遊女がもともと「遊び女」、歌舞音曲の技能者だったことに由来します。
一応言うと、遊女は「○○大夫」、歌舞伎や文楽などのお師匠の名前は「××太夫」。
点がぶらさがっている方が、男だそうです(笑)。
| comments(1) | trackbacks(0) | 20:23 | category: 江戸のうざいウンチク |
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コメント
すばらしい、ただ惰性で時代劇や小説を読んでおり、不思議に思ってはいましたが・・・、勉強になりました。
| おならさん | 2011/02/14 8:28 PM |

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