歌舞伎風俗通信

歌舞伎コラムです。
以前某雑誌に連載していたものの書き直し再録です。
その他いろいろうざいウンチクです。楽しんでいただけると嬉しいですー。
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# 中村富十郎さん死去…
好きだったのに…。
富十郎さんは、若いころ、戦争に行く前は女形(おんながた)をなさっていたからというのもあると思いますが、
立ち役をなさっていても、いかつい重厚な演技の中にもどこか優しげな丸みがあり、それが他の役者さんにはない独特の魅力になっていたと思います。
弁慶や濡髪ができる骨っぽい役者さんでありながら、所作が得意だったのも女形出身だったからでしょう。
狂言由来の演目など、コミカルなお芝居も魅力でしたが、これも踊りの名手ならではの、形を崩さない品格のよさがあってこそだと思います。

基本的に菊五郎劇団中心に動く、東京の役者さんでしたが、女形時代は上方にいらした(たしか)のもあって、
どことなく上方の味わい、匂いがあり、丸本ものをなさるときにその雰囲気が独特の華をそえていたと思います。

というわけで、このかたのお芝居で一番好きだったのが「吃又」でした。
師匠の土佐将監に背中を向けて、「(土佐の名字がもらえないなら)いっそ死にたい、いっそ死にたい」と、本当につらそうに、悲しそうに言ったあの雰囲気が絶品だったと思います。
最後の裃に着替えてから引っ込むところまでの浮き立つようす、カタチの美しさなども印象深いです。

逆に、非常にやさしげなかたであるために、
「勧進帳」の弁慶は似合うのですが、一度富樫をなさったときは、
なんだかどんなアヤシイ山伏でもかわいそうになってこそっと通してやりそうで心配になりました(笑)。

少し古くなりますが、所作で、以前「鐘の岬」から「浮かれ坊主」に引き抜いたのがあったのですが、
「鐘の岬」は確か道成寺由来の内容で、中世風のはかまに垂れ髪の若い女性が恋心を舞う舞台ですが。
これと、願人坊主が半裸でコミカルに踊る「浮かれ坊主」とを、早替りでやったのです。

あの、「鐘の岬」を見たときに、歌舞伎の、とくに所作というのは「絵」なんだなと実感しました。
直後に「浮かれ坊主」を踊る初老のおっさんが、美しい若い娘を踊って違和感がない。これは、若いムスメを「演じて」いるのでなく
その肉体を駆使して「若い娘」という「絵」を描いているからだと思います。
おっさんが若い娘の真似したら、似合いません。不気味でしょう。
しかし、おっさんがキレイな女性の絵を描くのは、アリです。
歌舞伎の所作は「絵を描く作業」に近いと思います。
訓練された肉体と、洗い上げられたテクニックとで、舞台というキャンパスに絵をかくのです。
ということを実感したのでした。

このかたの「保名」が見たかったなあ。

短いですが、さすがにさびしいので書きました。

そういえば、先代の勘三郎さんが亡くなったのもこんな季節でした。7日から休演で、そのまま亡くなったのでした。「俊寛」でした。行っとけばよかったと心底後悔しました。
ふと思い出した…。
みなさんも、「次がある」と思わず、これはと思った舞台は見ておいたほうがいいですよ。歌舞伎の役者さんはおおむね高齢です…。
| comments(0) | trackbacks(0) | 04:23 | category: 歌舞伎風俗通信 |
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